TECSは構造物に損傷を与えることなく、同じ位置で同じ試験を繰返し行うことができるため、コンクリート構造物の新設段階から、または既存のコンクリート構造物において、構造物の経年変化を把握するなど、コンクリート構造物の適切な維持管理に役立つものと期待されています。
コンクリートの構造体内部には、弾性率、密度、伝搬する速度が変化するとともに、内部に空洞などが存在し空洞位置で反射するという特性があります。
iTECSはこの特性を捉え、iTECSセンサーをコンクリート表面に押しつけ、センサーの近傍を鋼球などのインパクターにより打撃。そこから生じる弾性波をセンサーで観測。弾性波の伝搬速度、反射時間などを測定して、コンクリート表面、内部の状況を非破壊で検査するシステムです。
リック株式会社ではiTECSを活用して、以下のとおり新設時の施工管理から既設構造物の点検・調査・補修まで対応しています。
iTECSでは、次の4項目について非破壊試験結果より推定が可能です。
測定対象のコンクリートの内部を伝搬する弾性波の速度を測定することでコンクリートの圧縮強度を推定します。コンクリート内部を伝搬する弾性波速度とコンクリートの圧縮強度との間には、同一配合であれば強い相関関係があります。つまり、この相関関係を利用して、iTECSにより測定した弾性波速度からコンクリートの圧縮強度を推定します。
新設コンクリート構造物でiTECSにより推定した圧縮強度と、コア採取による圧縮試験結果を比較した結果は、図-1.2のとおりです。図-1.2より、iTECSを用いた場合、概ね±15%以内の誤差で強度推定が可能となります。
※本測定内容は国土交通省「微破壊・非破壊によるコンクリート構造物の強度測定試行要領(案)」に基づきiTECS法として導入されています。
図-1.2 iTECSによる推定圧縮強度とコアサンプリングから求められる圧縮強度との関係
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測定の対象となるコンクリートにおいて弾性波の反射時間を測定することにより、コンクリートの厚さを測定します。
コンクリート内部に欠陥等が無い健全なコンクリートは、コンクリート背面までの往復反射時間が測定され、厚さを求めることができます(図-2.1左図)。
しかしながら、コンクリート内部に空洞等が存在すると、コンクリート内部を伝搬する弾性波は空洞面で反射するため、反射時間が短くなり、iTECSによる測定厚さは薄く測定されます(図-2.1中央図)。一方、コンクリート内部にジャンカ等の脆弱部が存在すると、弾性波の伝搬速度が低下するため、反射時間が長くなり、iTECSによる測定厚さは見かけ上厚く測定されます(右図)。
これらの性質を利用して、測線上におけるiTECSによる測定厚さの変化から、コンクリート内部に存在する欠陥等の範囲・位置を推定することが可能となります。
コンクリート表面をインパクターで打撃したときにインパクターがコンクリート表面に衝突してから押し戻されるまでの接触時間を測定することで、コンクリート表面付近の品質を推定します。
接触時間はコンクリート表面付近の弾性率によって変化し、弾性率が高くなると接触時間は短くなります。図-3.1と図-3.2は、コンクリートの配合や養生方法の違いによる接触時間の違いを表しています。コンクリート表面付近の品質が向上すると接触時間が短くなることがわかります。
この性質を利⽤して、接触時間を測定することにより、コンクリート表⾯付近の品質を相対的に評価します。
コンクリート表⾯付近の品質はコンクリートの耐久性能に大きく影響します。近年は新設するコンクリート表面付近の品質を向上させるために、様々な施工方法の工夫がされています。 実構造物で接触時間を測定することにより,施工方法を工夫したことによる,実構造物のコンクリート表面付近の弾性係数の変化を,直接確認することができます。
本技術はリック株式会社と国立研究開発法人 土木研究所が共同で特許を取得しています。 特許第4565449号
コンクリート表面にひび割れが確認される場合に、そのひび割れの深さをiTECSにより測定します。
ひび割れ部の近傍でコンクリート表面をインパクターにより打撃すると、コンクリート内部を伝搬し、ひび割れ先端を回折する弾性波が発生し、表面に最も速く到達します。表面に最も速く到達する弾性波の種類は、ひび割れ先端を回折するときの角度θによって変化します。急に変化する境界を「臨界」といいます。ひび割れ先端から回折する波は、ある角度で性質の異なる波に変化します。このときの角度を「臨界角」と呼び、角度θ<臨界角の場合には引張波、θ>臨界角の場合には圧縮波となります。コンクリートの臨界角は90°です。また、コンクリート表面に設置したセンサーで、表面に最も速く到達する弾性波を測定すると(図-4.1)、引張波は下に凸形状(図-4.2の上図)、圧縮波は上に凸形状(図-4.2の下図)と測定波形は変化します。
以上の性質から、センサーの測定波形の第1波に着目すれば、以下のとおり判断できます。
●下に凸形状⇒θ<臨界角
●上に凸形状⇒θ>臨界角